オンライン株主総会とは?バーチャルで開催するメリットや問題点を解説

従来の株主総会といえば、大規模な会場に多くの株主が集まるスタイルが主流でしたが、近年ではオンライン株主総会も増えています。オンラインでの出席を認めるケースや株主総会そのものがオンライン開催といったケースもあり、こうした取り組みが便利な一方で法的に問題はないのか?といった疑問を持つ方も出てきています。

そこで今回は、オンライン株主総会に着目して解説するとともに、オンライン開催に対する問題点についてチェックしていきます。

オンライン株主総会とは

オンライン株主総会とは、取締役や株主がインターネットを介して遠隔地から参加できるまたは、出席できるスタイルの株主総会のことをいいます。一部ではバーチャル株主総会などと呼ぶこともありますが、内容としてはとくに大きな差はありません。

会場まで移動する必要がなくなり、自宅や会社などインターネット環境があればさまざまな場所から参加・出席できることが特徴です。また、開催形式にはいくつか種類があり、出席要件なども若干異なる場合もあります。次はそれぞれの開催形式について紹介するので、それぞれの違いを把握しておきましょう。

オンライン株主総会の種類

オンライン株主総会は、開催するスタイルによりいくつかの種類に分けることができます。それぞれの特徴や要件について見ていきましょう。

ハイブリッド型バーチャル株主総会

ハイブリッド型は主催側の主要メンバーがリアルで同じ場所に集まり、ほかの参加者とオンラインでやりとりするスタイルです。議長や取締役が会議室などの会場で対面しながら進行するため、オンラインならではのタイムラグなどが少なめなことが特徴です。

また、株主は参加型と出席型に分かれていることがほとんどで、いずれかの要件に合わせて参加するようになります。

参加型

参加型はリアルな会場からWEB会議システムを介して参加できる利便性がある一方で、法律上は出席したことにならない点がウィークポイントです。また総会のなかで発言することができないことや、審議の際にも意思表示できない点にも注意が必要です。そのため審議で意思表示したいときはリアル会場に行かなければなりません。

出席型

出席型は、WEB会議システムで発言や意思表示ができる条件を満たして参加すれば法律上で出席したとみなされるスタイルです。参加型と異なるのは自身で発言や意思表示をするために、パソコンや会議システムの設定などの準備が必要となる点で、これらをクリアできればリアル会場に出向いた場合と同じように発言することができます。

また、自宅からアクセスできることや移動する必要がないことなどから、ほかの総会よりも出席する株主が多くなる傾向があります。

バーチャルオンリー株主総会

バーチャルオンリー株主総会は、リアルな会場を用意しないでオンラインのみで開催するスタイルです。主催者側も自宅や会社の一部の部屋から参加できるほか、株主も自宅などから参加できることが特徴です。

2021年6月に産業競争力強化法が改正となり、特定の要件を満たすことを条件に開催が認められるようになりました。ただ、この制度を利用するためには、事前に経済産業省大臣または法務大臣の確認を受ける必要があることや、事前に相談をすること、法務局から取得した資料を準備しなければならないなど、複数のかべがあることは覚えておきましょう。

とはいえ、バーチャルオンリー株主総会を実施した大手企業があることや、多くの企業が実施に向けて相談しているので、今後の動向に注目したいところです。

オンラインでの開催は法律上問題ないのか

現行の会社法では、株主総会を招集する際に会場(場所)を定めなければなりません。(会社法298条1項1号)ただし、場所を決めなければならないというだけで、ホテルや競技場など具体的な場所は、指定されていないのでどこでもよい状態です。

オンラインでの株主総会の招集はハイブリッド型なら会社法には抵触しないか許容できる状態、バーチャルオンリーでの招集は「場所を定める」という部分がひっかかるため、事実上は法に抵触するとも解釈できます。

会社法に抵触するか否かで考えるとバーチャルオンリーは招集が難しいですが、現代の時代の流れやITの進化を軸に考えると会社法をベースに考えるほうが困難だともいえるでしょう。ただ、あくまでも現行の会社法とオンライン招集のあり方での解釈なので、今後なんらかの動きがあれば、バーチャルオンリーでの招集に対しても変化が生じる可能性があるといえます。

オンライン株主総会のメリット

オンラインでのやり取りが普及して、企業や個人にも多くの影響を与えていると思いますが、オンライン株主総会にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、オンラインで招集する際のメリットを解説していきます。

遠方の株主が参加しやすくなる

パソコンなどWEB会議システムを導入できる機器があれば、場所を選ばずに誰でも参加できることがメリットです。とくに遠方に住む株主の場合、移動時間や交通費をかけずに自宅からでも参加可能となります。また、移動が困難な状況の方にも参加しやすくなるでしょう。

また、総会当日に仕事などがあって忙しい方にはタイムパフォーマンスを向上させることにもつながります。一度参加すればその場を離れてほかの作業ができる、音声だけでも聞くことができるといったこともメリットといえます。

手間やコストを削減できる

本来ならホテルや会議室などリアルな会場を用意しなければならないところ、オンラインでの開催なら会場をレンタルするコストを削減することができます。会場を用意する場合まず会場探しからはじまり、当日の椅子やテーブル・飲み物などの準備が必要ですが、そういった手間も省くことができます。

なお、準備をするうえでの人員の確保や人件費もカットできるので、主催者側にはコストや手間を大幅に削減できるメリットがあるといえるでしょう。規模が大きい総会なほど、削減できるコストも大きくなります。

感染症の予防対策になる

リアルな会場に多くの人が集まる場合、その空間では感染症に感染するリスクが高まります。いくら感染症対策をしていたとしても、締め切った会場内では避けることは困難な状態です。その点、オンラインならこうしたリスクを避けることができ、予防対策としても有効な手段といえるでしょう。

反対に自分が風邪などの感染症に罹患している場合、本来なら総会を欠席しなければなりません。しかし、オンラインなら周囲の人に感染させるリスクを最小限にでき、多少体調が悪くとも参加することができます。

デジタル化をアピールできる

現代の日本ではさまざまな分野でデジタル化を推進しています。オンラインで開催するということは、これらの流れに沿って会社を運営しているという証拠にもなるため、デジタル化をアピールすることにもつながります。

いち早くデジタル化を導入している企業は、その分時代の流れや国の方針などにもアンテナを高くしている印象を与えるほか、こうした流れに対応できる優秀な社員がいるとも解釈できます。株主の立場から見ても将来性がある、今後の成長が期待できるなどポジティブなイメージとなるでしょう。

また、使用する機材はなるべく新しいものや導入実績の高いものだとより一層のアピール効果が期待できます。こうした分野にも着目しておくことをおすすめします。

オンライン株主総会の問題点

オンラインを活用した株主総会は、企業側と株主にとって多くのメリットがあることがわかりました。しかし、メリットばかりではなく気をつけておきたい問題点もあります。ここではどんな問題点があるのかチェックしていきましょう。

株主へ招集通知が必要となる

株主総会を開催する際は株主に対して招集通知を出さなければなりません。通常の招集通知記載事項だけでなくオンラインで開催する内容を周知させることが必要です。たとえば、総会の様子を配信するサイトのアドレスや、インターネットを介して審議する際の具体的なやり方などはあらかじめ連絡しておくほうがよいでしょう。

また、オンラインでの開催に戸惑う株主がいることも考えられます。そういった方々が不安にならないよう配慮も必要でしょう。

ネットに不慣れな株主に対応する必要がある

株主のなかにはインターネットやパソコンなどに不慣れな方もいます。そういった方々へのサポートも必要となるでしょう。たとえば、会議システムの導入方法や設定、マイクなどの音声に関するサポートが挙げられます。

また、こうした方々が簡単にアクセスできるよう、手順が簡潔であることも重要なポイントです。書面などで手順を記した案内を送付することも検討しておきたいところです。

安定したネット環境が必要となる

インターネットを利用するうえで最も大事なのが安定したネット環境があることです。とくに大勢の株主が参加するとなれば、それに対応できるだけの環境が必要です。企業が保有するインターネット環境の見直しと確認や、想定外に多くの人がアクセスした場合の対処も考えておくとよいでしょう。

もしも、自社のネット環境のキャパシティに余裕がない場合は、総会を数日に分ける、時間を区切るといった対応も検討しなければなりません。

セキュリティー対策が必要となる

インターネットを介したやり取りを行う際はセキュリティー対策が不可欠です。多くの人が参加するならなおのこと、個人情報をはじめさまざまな情報が集まるといっても過言ではないからです。

自社のセキュリティーレベルを高くすることはもちろん、使用する会議システムのセキュリティー面の確認などもしておきましょう。

出席者の本人確認を行う必要がある

リアルな株主総会では会場に入る際に本人確認を行いますが、オンライン開催では本人確認が難しいケースもあるでしょう。どの株主がどこからアクセスするかもわからないので、本人を特定する対応が必要となります。

たとえば、株主一人ひとりにIDとパスワードを付与する、事前にQRコードなどを配布して会員登録してもらうといった手段が挙げられます。株主が会議システムにアクセスする際にIDやパスワードを使ってログインすれば、本人確認はもちろん株主の特定や把握ができるでしょう。

このときも株主のストレスとならないような手軽かつ簡単な方法であることが重要です。面倒に感じてしまえば、オンラインでの開催を避けて参加率が落ちる可能性が出てくるでしょう。

議事録の記載方法に注意する必要がある

株主総会の議事録には株主が総会に出席をしたときの出席方法を記載しなければなりません。(法施行規則72条3項1号)その際はWEB会議システムを利用していること、株主がリアルで会場に集まる場合と同じように、発言や意思表示ができる状況があることを明記しておきましょう。

オンライン株主総会の開催場所

株主総会は原則として開催場所を定めることが必要です。しかしオンラインで開催する際はどのような場所にするかが気になります。ここではオンライン株主総会での開催場所について見ていきましょう。

基本的にどこでも開催できる

会社法では株主総会を開催する場合は場所を定めるとしていますが、具体的な場所の指定はありません。旧商法の時代には本店所在地と同一かその隣接地(旧商法233条)といった定めがあったものの、現会社法では場所の制限に関する記載はありません。ただ、場合によっては例外もあり、その際には例外の内容に沿った対応が必要となります。

例外もある

会社の定款に開催場所についての定めがある場合は、定款に従って場所を定めることが必要です。これは会社法でいくら場所の制限への記載がないとしても、その会社の方針なので従わなければならないものです。もしも、定款に則った開催が難しい場合は、定款の変更を検討するようになるでしょう。

また、これまでに招集した場所と異なる場所、株主が参加しにくい場所などで開催するときは、株主に対してその場所での開催理由を説明しなければなりません。これは会社法831条で定められていることで、意図的に株主の参加を難しくしている場合は「著しく不公正なとき」に該当するため決議の取り消し請求を受けることもあります。

次にこちらでは、Zoomの有料プランの選び方やその機能について詳しく解説します。多様なビジネスシーンに活用でき、ウェビナーの開催を検討している方にもおすすめの内容となっていますので、ぜひご覧ください。

まとめ

オンライン株主総会は、企業と株主にとってメリットが多い一方で、会社法の観点から見ると開催が難しい一面もあります。

一方で、企業にとって会場を押さえるコストや会場準備にかかる人件費などを省けることは有益であり、株主にとっても移動や交通費などを削減できます。また、感染症対策としても有効な手段です。

法的な懸念は今後の動向次第ではあるものの、企業と株主の間でより利便性を高める方法としては、オンラインでの開催に期待するものがあります。もしも、オンライン株主総会を検討している場合、法的な手順を踏まなければなりませんが、必要な機器やサポートについてはFUKURACIA総合案内にご相談ください。

充実のオンラインサポートはもちろん、店舗や会議室のご案内や備品の手配なども行っています。はじめてオンラインでの開催をする場合なども、さまざまな面でお手伝いいたします。

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