政府の掲げる「働き方改革」。多様化する就業スタイルを社会全体で創造することで、働く意欲のある人の就業チャンスの幅を広げようというものです。会社としてもそうしたワークスタイルの多様性に対応できることが必須となりました。人事や総務だけでなく、各部署の管理職もそうした対応に迫られるでしょう。会社として受け入れ態勢を整えるためにどう対応していけばいいのでしょうか?


多様化する働き方とは?どんな働き方があるのか

少子高齢化社会に入り、労働力人口が減りつつあるなか、これまでは会社の事情に合わせることのできる人材を雇用していれば良かったところ、それでは対応し切れなくなってきています。ここで求められ始めたのが、多様化性のある働き方です。会社ではなく、働く社員の個人の事情に応じてこれまでにないワークスタイルを受け入れることが求められています。

近年、日本の会社でも取り入れられるようになったフレックスタイムは社員の裁量に任せて出勤時間に幅をもたせる制度ですが、これも働き方の多様性の一例です。こうした考え方をもっと発展させ、たとえば通常の8時間勤務ではなくもっと短い時間だけ働く時短勤務、全国に支社や支店があり転勤が余儀なくされる会社なのに転勤を伴わない地区だけを勤務地とするなど、これまでの日本の会社のシステムでは一般的でない働き方が求められてきています。


生産性が上がる?働き方の多様性のメリット

このように社員の都合に合わせた自由なワークスタイルは、短時間しか働かない、決まったエリアでしか勤務しないなど、会社にとっては業務に差しさわりが出るように捉えられがちです。しかし、決められた時間やこれまでのワークスタイルに縛られることなく、柔軟性を持って働けることで個人のモチベーションがアップするのも事実です。

モチベーションは、仕事をする活力となり、自由なアイディアの源ともなる大切なものです。やる気のない社員にモチベーションを持たせるため、どれだけの会社が多くの研修や業務改革を行っているでしょう。こうした施策をすることなく、社員が働きやすい環境、多様性ある働き方を会社が認めることで、おのずとモチベーションの向上にもつながります。結果として作業効率もアップ、実際に生産性向上につながった企業が多いようです。


中途社員に対する研修のポイントは「組織社会化」

多様性のある働き方を求めて入ってきた中途採用の社員。研修を実施して会社への理解を深め、即戦力になってもらいたいもの。そうした中途社員に対する研修のポイントは「組織社会化」といえそうです。

中途採用で入社した人の場合、前職との違いから、いきなり職場で能力を発揮することが難しいこともあります。そうならないためにも、配属前に最低限のマナーやスキルを身に付ける研修を行いましょう。研修後に職場に配属することで思わぬメリットを得ることにつながります。

「組織社会化」という考え方

仕事は一人で行うものではありません。チームで役割を決めて動いていくべきものです。しかし、チームワークが取れなかったり、身勝手な振る舞いをしてしまったりを繰り返すと、次第に周囲から相手にしてもらえなくなります。これがバックボーンや過去の経歴がわからない中途社員であればなおさらです。入社早々、あの人の業務は手伝いたくない、ノウハウを共有したくないと思われては、いくら個人にスキルがあっても成果を出すことは難しくなるでしょう。

逆に、会社の資源をうまく使える人は、入社年次に関係なく成果を出しやすいといえます。これを学術的な用語で「組織社会化」といいます。 つまり、成果を上げるためにチーム(組織)にいかになじむか、適応するかということですが、特に中途社員は顕著です。新卒はできないのが当たり前という前提でチームは受け入れてくれますが、中途社員となるとそうはいきません。組織で一定のポジションを獲得するためには、やはり成果が必要になります。

組織の文化や空気感を察知してコミュニケーションを取ること、下地を固めていくことは一見遠回りに見えて、成果を上げるための近道といえます。中途社員を活用していくために、まず組織になじみ適応することを意識させる必要があるでしょう。

アンラーニングで要らない知識を忘れ去る

新しい職場において、中途社員が「前の会社はこうでした」と言ってしまうと、言われた側は気分のいいものではありませんし、一緒にやろうとする気もそがれてしまいます。これではなかなかチームになじむことができません。そういう意味で中途社員には、古い知識や価値観、やり方に固執することなく、これまで学んだものを捨て去ること、またその環境に応じた新たな学習を始めるための準備を行わせることが大切。これを「アンラーニング(学習棄却)」といいます。

研修では、学びによって何かを得てもらうことと考えがちですが、こうして組織に合わせて自分自身を変える、不要な習慣や知識を捨てることも必要です。これまでのワークスタイルを振り返ってみて、すべて正解と捉えるのではなく、やってきたことをフラットに机の上に並べ、今の環境でのベストな行動をとれるように、自分自身を客観的に見る機会を研修内に設けます。 そうすることで本人が、現在の会社にすぐに転用できるスキルもあれば、なかなかマッチしないやり方や進め方をしようとしていたことに気づくでしょう。

中途社員だからこそ基本のビジネスマナーを

若手の中途社員を採用するにあたっては注意が必要です。採用した中途社員に対して「こんなの知っていて当然」と思われているビジネスマナーや基本の社会人スキル(ホウレンソウやPDCA)などが全く通じない(知らない)というケースもあります。前職における職場の風土、教育や育成方針が全く異なるので、自社の新人ならできて当たり前なことも、さっぱりできないということもあるのです。

しかしそれは、できないのではなく、単に知らないということ。マナーや礼儀などが身についていれば、現場配属された後も好印象を与えるということを知らない場合も多いのです。これは前述したように、組織になじむうえでとても有効に働くことです。こうした社会人の基本のスキルについては、現場でなくとも人事や総務管轄で、研修を行うなどでクリアできるものですので、配属前にひと通りのレクチャーを行ったうえで現場配属をすることをオススメします。

マネジメント能力を開発する、客観的評価制度を取り入れ管理職、マネージャーには、部下の生産性を公平に評価する能力が求められます。これまでのように一律な働き方でなくなる分、その評価の仕方も難しくなるでしょう。働き方が多様化してきた社員を、管理職として公平に評価するには「客観的評価制度」が有効です。

なぜならマネージャーに求められるのは、プロセスよりも「結果」だからです。そういう意味では、マネジメントは理論よりも実践といえます。「知っている」ではなく「できている」ということが重要視されるのです。何が「できているか」を知るために、そもそも自身のマネジメントはどの程度のものなのか、現状何が足りないのか自己を客観視することから始めていくことが第一歩だといえます。

「つもりの自分」と「周囲から認識されている自分」の差異をみる360度評価

では、マネージャーはチームの効果を最大化させるためにどのように振る舞えばよいのでしょうか。過去の成功体験や、自分自身が受けてきた上司のマネジメントなどを参考に、またマネジメントに必要となる知識を外部から取り入れ、自分なりのマネジメントを展開していると思います。しかし、自分の行動というのは、自分自身ではなかなか客観視できないものです。良かれと思ってやっていることも、実は部下にとっては逆効果ということもあるかもしれません。

このような時は、360度評価などを行って、周囲の関係者から本人の日ごろの言動を客観的に評価してもらい、フィードバックを行うことが効果的です。具体的には部下や同僚、上司から、本人の日ごろの職務について回答してもらいます。また本人も同じ項目について客観的に振り返り、回答していくことで「できているつもりの自分」と「周囲から認識されている自分」との差異が明らかになります。

また360度評価を行うことで、本人へのフィードバックのほか、日ごろ観察しにくい部下への接し方などを見ることも可能です。上司にはいい顔をしていても、部下からの信頼が薄いという人物もいますので、早めの対策を打つためにも有効な施策といえます。

しかしマネージャーは忙しいポジションです。フィードバックもシートだけ返却して自分で見ておいてくださいでは、その効果は薄くなってしまいます。その差異がいかなる言動から生まれているのか、その原因はどこにあるのかなど、解決策やアクションプランなどを考えさせる機会を研修という場を通じて、取り組めるとベストです。

「マネジメントの基礎能力」を問うヒューマン・アセスメント

対象者の日々を振り返る360度評価とは異なり、その場で、マネージャーとしてもっておくべき能力を図るために、架空のケースに取り組ませるヒューマン・アセスメントという方法があります。これは戦略立案や、部下との面談姿勢など、「知っている」ではなく「できている」かどうかを、外部アセッサーが分析するというものです。実際に自分の強み・弱みを理解することを通して、取り組むべき課題を明確にしていきます。

マネージャーの能力を細分化すると、「マネジメントの基礎能力」、「専門知識や社内における特殊的な能力」に分けられます。こうしたヒューマン・アセスメントにおいては、前者の「マネジメントの基礎能力」に注目して評価していくことになります。すなわち、その人物が今、他業界の同じポジションに転職したときにどれだけパフォーマンスを発揮することができるのかということを見ることができます。

ちなみに、自社内で成果を上げているマネージャーの場合でも、後者の「専門知識や社内における特殊的な能力」に頼ったマネジメントをしていては、例えば、社内で部署異動した場合に全く成果を出せない可能性も考えられます。現状の成果とヒューマン・アセスメントにおける評価が比例しないことは往々にしてみられることです。

また、すでにマネージャーとして活躍されている方を対象に、客観的に自己を振り返ってもらうという活用の仕方に加え、今後マネージャーとして活躍が期待できる次期マネージャー層に向けて実施し、マネージャー候補となる人材の資質を見極めておくという活用方法もあります。

次世代リーダーを発掘していくにあたっても、ヒューマン・アセスメントは有効です。対象者の現状の役割・環境によって、顕在化した実践している能力だけでなく職場では発揮する機会が少なくなってしまっている潜在化した能力も含めて、リーダーとしての「基盤能力」を総合的に評価していくことが可能です。

このような360度評価やヒューマン・アセスメントを行うことは、個人へフィードバックだけではなく、マネージャー層対象者全体の平均値を出すことで、自社における当該ポジションの傾向を知り、強み、弱みを把握し、今後の育成施策、研修企画の参考にすることにも大いに役立ちます。


ワーク・ライフ・バランスを実現させる多様性のある働き方

多様性のある働き方に対応することは、会社にとって多少面倒な部分があるかもしれません。これまでどおり一律に社員を管理したり評価したりすることができなくなるので、どうしても管理する側としてやりやすい方法を社員に押し付けてしまいがちでしょう。しかし、こうした考え方こそが、働き方の多様性によるメリットを会社として享受する弊害になります。

政府が「働き方改革」を推し進める理由のひとつは、国民一人ひとりのワーク・ライフ・バランスの実現です。ワーク=仕事、ライフ=生活、バランス=調和ということで、仕事と家庭の両立があってこその幸せな人生という考え方です。管理職はもちろん、社員一人ひとりがこうした考え方を理解することが、多様性のある働き方をより良いものにしてくれるでしょう。

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会社と社員の信頼関係で育む多様性のある働き方

国の方針、会社の方針として、今後、急速に広まりそうな多様化する働き方。一部の社員だけが利用するものではなく、長い人生のなか、誰もが活用しうる可能性のある就業スタイルです。会社としては、面倒がらずに、そうした働き方を選択するしかない社員の立場に立って、寄り添うような姿勢で管理体制を作りましょう。

会社と社員との信頼関係が、多様化する働き方を支え、ひいては仕事のモチベーションアップにつながります。やりがいをもって取り組む仕事は、結果として業績の向上や、効率アップをもたらすでしょう。会社と社員の両方がウィンウィンになる可能性を大きく秘めているのが、多様性のある働き方なのです。

参考:
仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章|内閣府
「第 15 回 日本的雇用・人事の変容に関する調査」結果概要(PDF)|公益財団法人 日本生産性本部
働き方の多様化・柔軟化は生産性向上に効果的|@人事ONLINE

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